古物やユーズド品、廃材を蘇らせ、
新たなアイデアやデザインを加えることで、
価値とストーリーを生み出し、
新しい持ち主の手に渡す“アップサイクル”を提案。
プロローグ アップサイクル商品との出会い
元はふとん店の倉庫だった建物を改装し、古いものや廃材を回収・買取し、素材がもつ歴史や雰囲気を活かしつつ、新しいアイデアやデザインを取り入れ再生させる「アップサイクル」という考え方を軸に、大分市春日町でインテリアショップを展開する「ストックパイル エコリオ」。
多種多様な趣味が混在する非日常的な空間が広がる店内に足を踏み入れると、ヴィンテージ小物から店舗の陳列用什器などにも使えそうな和洋ヴィンテージ家具や骨董品が所狭しと並び、眺めているだけでなんとも言えないワクワク感が膨らみ、DIYマニアでなくともいつの間にか冒険心が掻き立てられます。
店内を何周しても「あれ、こんなところにこんな素敵なものがあったっけ?」と、新たな商品との出会いあるほど、多様で数多な品揃えが魅力的です。ちなみに商品の中には年代物の西洋オルガンや江戸時代の和ダンスなど、博物館や歴史的建造物の中に飾られていてもおかしくないほどの貴重品もあるのですが、驚くことにそれらの商品のほとんどが元々は捨てられるはずだったものだそうです。
代表取締役の陶山さん(上画像左)は、元々産業廃棄物の収集・運搬を手がける老舗企業の7代目として会社を経営していましたが、さまざまな廃棄物を取り扱う中で、まだまだ活躍できるものや歴史的価値のあるもの貴重品など、その品物の価値を見いだされず処分されてしまう事に疑問を強く感じたことから、新たな事業として「ストックパイル エコリオ」を立ち上げたのだそうです。
今回のレポートではそんな陶山さんに、店舗運営を通して感じていることや「アップサイクル」に対する想い、そして商品のメンテナンスに関するこだわりなどを伺いました。また、レポート内ではおすすめの商品もご紹介していますので、合わせて最後までごゆっくりとご覧ください。
店舗紹介 倉庫の大きさを最大限に生かしたおしゃれな空間
店舗の入り口前には、棚やテーブルなど、作り手のアイデア次第で何にでも化けてくれそうな大小様々な樽や木材、流木などDIYで活躍する資材が並びます。小さな流木や木の板は、アクセサリーなど小物を並べて飾ったり、ハンドメイド作品の撮影用にディスプレイとして使えたり様々なシーンで活躍しそう。
店内に入ると、2階建て倉庫という天井の高さや広さを活かして、両サイドに背の高い木が置かれています。年代も形も様々な雑貨や家具とのコントラストが非現実的な空間を創り出し、この店舗ならではの独特な雰囲気が漂っています。2階に上がると、上画像のように1階を一望することができます。1階スペースでは、半年に一回の割合で、ピアノやヴァイオリンのクラシックコンサートも行われているそうです。
1階 食器から家具や楽器まで、充実した品揃え
テーマごとに異なった表情を見せてくれるディスプレイからは、スタッフの方々のセンスだけでなく、店内に並ぶ「モノ」への愛情が感じられます。
装飾の美しいカップや、颯爽とした表情がかわいい鶏の置物は組み合わせが難しそうですが、テーブルクロスの色合いや柄、レトロなガラス瓶などと合わせてセンスよくコーディネートされています。店内をぐるりと見て回るだけでコーディネートの参考にもなります。
中には美容室で使われていた年代物のシャンプー椅子やオシボリ保管器など、珍しい事業用品もあります。酒瓶やドライフラワーのブーケは、気軽に飾るだけで一気にお部屋の雰囲気をお洒落にしてくれそうです。
古いミシンや時計にタイプライターは、いつの時代にどんな人が使っていたのだろう…と、ふと想いを馳せてしまいます。
ハリウッド映画の世界をそのまま再現するのにピッタリの商品から、ちょっとおしゃれな男前空間が演出できそうな小物も豊富です。
画像奥に見えるカラフルなロッカーは、古くなったものにスタッフさんがペイントを施して動作調整し、新たに生きを吹き込んだものだとか!
2階 森の中のような空間にアンティーク家具が並ぶ
2階に上がると世界がガラリと変わり、より高級感が増して重厚な雰囲気の家具などが並びます。まるで森の中に突然現れた中世ヨーロッパの素敵なお屋敷に忍び込んだかのようです。その秘密は、本格的なアンティーク家具が醸し出す品の良さと、ウッドチップと板を敷き詰めた床にあります。
このウッドチップは楠からアロマを抽出した後リサイクルされたもので、見た目の楽しさだけでなく湿気とりと虫除けの役割も兼ね備えています。ウッドチップを敷き詰めるだけでも大変な作業ですが、機能が衰えると全て入れ替えるようにしているそうで、このようなおしゃれな演出の中にも、エコの精神とお手入れの細やかさが隠れていて、さらなる商品への愛情を感じます。
家具以外にも和洋の骨董品、ランプ、時計など、歴史的ロマンとストーリーを感じるものばかりが並んでいます。中には、文化財級の貴重なもので値がつけられないため非売品として展示されているものもあり、エコリオが取り扱う商品の幅の広さに感服してしまいます。
おすすめ商品 ピックアップ
※すべて税別です。
まるで中世ヨーロッパのお城から出てきたような美しい装飾が施されたインテリア。鏡に傷はなく、椅子や机の足、引き出しも使用できるようにしっかり整備されています。
▲アンティーク薔薇柄ドレッサー 椅子セット 28,000円
▲シャンデリア 38,000円
文化財級のオルガン。木製の装飾に温かみが感じられます。傷も少なく音も出るので状態はかなり良好です。
▲1920年代イギリス製アンティークオルガン(縦長・音が鳴ります)420,000円
▲日本製アンティークオルガン(音が鳴ります) 非売品
江戸時代末期以降の家具や、薬棚、金庫などは、映画や舞台のセットとして貸し出しすることもあるのだとか。全て調整されているので、引き出しも戸棚も使用可能です。
▲ビンテージ薬棚 48,000円
▲江戸末期の金庫 32,000円
▲撮影小道具としてもレンタルされるレコードプレイヤー。貫禄たっぷりの金庫は展示のみの非売品。
▲築170年を越える古民家から出た年代物の床材や柱。約2世紀を生き抜く長い時を経たからこそ纏う重厚感は新材料では醸し出せない雰囲気。きれいに磨き上げられているので、このように再利用できます。幅が広く長いもので約5,000円くらいです。
▲2階の床に敷かれたものと同じくすのきチップ(500円)。くすのきの豊かな香りが漂います。
▲くすのきチップと同様に消臭効果がある竹炭チップ(500円)。大分は竹が多くさまざまなイベントで竹が使用されるが、そのまま廃棄されていたものを引き取ってチップに変え、利活用できるようにしたもの。この竹炭は臼杵市の竹宵というお祭りで使用した竹ぼんぼり(これまでは処分していたもの)を再利用したものです。
▲旧型ミシンはさまざまな年代、形、色が揃っており、まだまだ現役で活躍できるものばかり。
例)シンガー製足踏みミシン 15,000円/16,000円 Admiral足踏みミシン 18,000円
▲「ものづくりに興味がある人は必ず反応します」と代表の陶山さんが語る、真空管とマイクロメーターをコラボさせたユニークなランプ 22,000円
▲学校で使用されていた学童椅子 2,000円
小学校時代の無邪気な思い出が蘇ってきます。そのままの購入はもちろん、色を変えたり、棚にリメイクするなどの注文もできるそうです。
▲DIY材料のコーナー
古民家で使用されていた床材や廃材、漁業の船で使用されていたランプや船のパーツ、変わった形のネジや金具、鉄製品など、「これは何?」とひと目見て判別できないようなコアなパーツが揃っています。
アメリカンビンテージキッチンウエアの代表格でもあるファイヤーキング。世界的にコレクターも多く、国内でも人気の高いアイテムです。アメリカから直接輸入しているため、特にレアで人気の高いターコイズブルーの商品も多数あり、国内でもこれだけ数が揃っている店舗は珍しいのだとか。
▲水色マグカップ 13,000円
インタビュー ストックパイル エコリオ 代表 陶山誠司さん
▲ストックパイル エコリオ 代表 陶山 誠司さん
Q:お店をオープンさせた経緯を教えてください。
「元々は130年続く家業を継ぎ、産業廃棄物の収集運搬業をしていました。その頃から、廃校になった教室から運ばれてくるたくさんの椅子などを見て“まだ使えるのに、もったいないなあ。何かに利用できないだろうか”という思いがあり、リサイクルできるお店を始めようと思い立ちました。扱う商品には大型のものがあるため、ある程度の広さが必要だったこともあり、1年以上物件を探して、3年ほど前にようやくこの場所でオープンするに至りました」
Q:扱う商品は、処分される廃棄物だったものなのですね。
「95パーセントがそうです。そういったものを回収・買取したり、中にはお客様の方から思い出深く捨てられないから託したいと、寄付していただくこともあります。現在陳列している洋風の豪華な調度品などは、その昔は栄耀栄華を極めたであろうお屋敷が取り壊される際にやってきたものです。もちろん全てが商品として並べられるものではないのではないので、結果として処分されるものもありますが、捨てる前に一度踏みとどまって、本当にもう使えないのかと、物と向き合い、手入れをすればまだ使えるものや、利用できそうな部分やパーツだけでも残して再利用できるようにしています」
Q:お店のコンセプトを教えてください。
「そのまま利用できるものをメンテナンスして販売するリサイクルやリユースはもちろんですが、そのような単純なリサイクルショップではなく、私達はもう一歩踏み出した取り組みとして、『アップサイクル』を行っています。例えば、ソファや椅子の脚など利用できるパーツを残したものに、他のパーツや土台を組み合わせて1つの新たな形を生み出したり、残ったテーブルの脚に当方が作った天板を合わせて新しい家具にしたりなど、自らのアイデアや技術を加えて商品を生み出し、再利活用する事を『アップサイクル』と言います。リサイクルとはゴミを資源に戻して再利用することですが、そうではなく古いタイヤをおしゃれな鞄に作り替えるなど、できるだけ元の形や素材を活かしエネルギーを使わずに、元よりも価値のあるモノとして生まれ変わらせる再利用方法です。お店を始めるまではわからなかったのですが、様々な廃棄物に触れるようになってからは、少しずつ“まだ使える良いモノ”がわかるようになってきました。私もそれまではゴミを回収する側だったということもあり、家具はどちらかというと量販のものを使って、飽きたり壊れたりすれば処分するという考えでしたが、大量生産された商品は木材が弱くすぐに朽ちてしまいます。一方で、古き良き時代に建てられた日本の家屋や洋館には立派な大木が柱で使われていたり、装飾品に貴重な石が使用されていたりして簡単に朽ちることはありません。長く使えるものも気分で持ち換えられるものも、それぞれ一長一短ありますが、アップサイクルという概念を広めていくことで、こうしたモノとの付き合い方も知って頂ければと思います」
Q:お店のお客様はどちらから来られることが多いのですか。
「ほとんどが大分の方で、8〜9割を占めています。大分はものづくりやDIYをされている方が多く、マルシェ系のイベントも多いんですよ。日本でもトップレベルのDIYクリエイターの方もいらっしゃって、全国のDIY情報を持ってきてくださるのがありがたいです。最近では、お客様からのSNS情報発信のおかげで県外からのお客様も多くなりました」
Q:これだけの商品を扱うならば、ディスプレイを変えるのが大変なのでは?
「商品入れ替えのサイクルが早いものもあれば、長く居続けるものもありますので、こまめに各コーナーのディスプレイをチェックするようにしています。そこに置いたはずのものが他のスタッフが別の場所に変えているなんてこともありますが、見せ方や陳列を変えるだけで不思議と商品の雰囲気が違って見えるので、スタッフ全員がその時のインスピレーションを働かせられるように常にアンテナを張っています。また、2週間に1回のペースでコーナーの全体的なレイアウトも変えています。最初はどう使えば良いのか思いつかないような商品でも、場所を変えると使い方が閃いたりして自分の創作意欲が湧くんですよ(笑)。ディスプレイを変えるのは時間も労力もかかりますが、自分たちにとって新しい発想を生み出す大切な作業だとも思っています」
Q:商品のメンテナンス技術はどのようにして勉強されたのですか?
「独学で少しずつ勉強しました。できる限り綺麗にして店頭に出すことを大切にしているので、メンテナンスにはかなり力を入れています。また、古いものを取り扱っているものですから、お客様の中には目に見えない感覚的な分野でも心配される方もいらっしゃるので、浄化する供養もきちんと行ってから手を入れるようにしています。朝一番には必ずこまめに空気の入れ替えをして、商品は丁寧にはたき掃除することから仕事を始めています。実在する商品と感覚的で見えない部分はそれぞれ同様に気を配るように心がけています」
Q:スタッフの皆さんも色々な技術をお持ちだと伺いました。
「スタッフはそれぞれが、タイルアートや革製品のインストラクター、出張カフェなど、自分の好きなことを突き詰めたり、クリエイティブな仕事をしている人ばかりです。お子さんがいらっしゃる方は事務所で勉強させていたりもします。みんなが自分の得意分野でネットワークを広げているので、自然とそういった人が集まり、そこから仕事の繋がりや人との出会いが生まれて、会社にとても良い影響を与えてくれています。また、多方面で活躍する人が集まることによって、それまでになかったアイデアが面白いように生まれます。当社は様々な視点が必要な職場なので、エコリオそのものが『想像することを創造する場所』でなければなりません。そのためには、スタッフ全員が気持ちよく仕事をしてもらえる環境を整えることが私の一番の使命だと考えているので、Wワークも子育ての事も、会社にとって有益で必要な事であれば大歓迎です」
Q:これからのビジョンを教えてください。
「現在は、アンティーク、骨董品、アメリカ雑貨など、様々な分野の商品をトータルに取り扱う店舗としての側面が強いのですが、『DIYの材料を見つけたい』『アメリカのレアな雑貨を探している』『欧風アンティーク家具がほしい』など、お客様のニーズにより細かく寄り添い、欲しいものを見つけやすくするために、店舗のコンセプトを明確にして、その商品に特化した専門店を作っていきたいと考えています。また、日本の骨董品などは国内よりもむしろ海外にニーズがあると考えているので、海外に向けた情報発信やネット販売等の販路拡大もしていければと思っています」
Q:お忙しい中、ありがとうございました。
エピローグ 取材を終えて
初めて耳にした「アップサイクル」という考え方に、眼から鱗のような衝撃でした。様々な環境問題が叫ばれている昨今ですが、普段の生活の中で自分にできることはあまりないような気がしていました。しかし、何かが欲しいと思い立った時、新品だけではなくアップサイクルされた商品を選ぶことが、個人ができる小さくても大きな「エコ」なのだということに気づかされました。
また、インタビューを通して陶山さんが商品と真摯に向き合う実直さを感じ、丁寧にメンテナンスされた商品が醸し出す美しい佇まいに納得しました。さらに、スタッフの皆さんへの柔軟な考え方によって、店舗でも生き生きと働くだけでなく、それぞれがものづくりに通じて自分のライフスタイルを確立されているのが印象的でした。人と人とのつながりが色々な化学反応を起こし、お互いにインスピレーションが湧き出るような空間を創造しているのですね。訪れるたびに違ったアイデアがひらめきそうです。今度はどんなときめきを起してくれるのかと期待に胸が膨らむ、そして何度でも足を運びたくなるような場所でした。
アクセス 大分インターから車で約5分
大分インターから車で約5分。店舗前に駐車場があります。
STOCKPILE ecorio(ストックパイルエコリオ)
住所:大分県大分市中春日町14-3
電話:097-513-3620
営業時間:10:00〜18:30
定休日:木曜日(2020年3月から水・木曜日)
WEB:http://ecorio-oita.com/